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日本秘湯を守る会

名誉会長挨拶

日本秘湯を守る会 名誉会長

佐藤 好億

福島県 二岐温泉 大丸あすなろ荘 館主

1975年 日本秘湯を守る会創設メンバー。設立時に副会長に就任。
1984年 日本秘湯を守る会の会長に就任。
2014年 日本秘湯を守る会の名誉会長に就任。

日本秘湯を守る会の設立に奔走した昭和40年代50年代、多くの会員宿が秘境の感がたえない陸の孤島でかろうじて湯の明かりをともしていました。
深山ふかく分けいる山道は悪路で車も通れない。時間もかかる。湯治にも荷を背負って歩かなくてはいけない山の宿も多かった。当時は辺境にある一軒宿など「世間から辺鄙で古臭い」と敬遠されました。
しかしいまや当時が嘘のように、会創設後30数年、宿への道も交通事情も格段によくなりました。それとともに「秘湯」が旅先を選ぶ大きな条件にあげられるようになりました。逆に旅びとからは「秘湯とは何ですか」「交通事情もよく建物も近代的すぎて、秘境の温泉とはいえない」「秘湯の宿らしくない」などという声も耳にします。
時代は常に変貌してゆきます。交通網や旅の選択肢も増えより高速化し、旅びとが好む宿の設備も料理も付加価値や流行の温泉地も恒久的に変化しつづけるでしょう。変わらない何かがあるとすれば、それは「旅をしたい」という人間回帰や自然回帰への本能にもにた心の叫びであり、たとえ旅の目的が異なっても、その旅先の止まり木には宿がありつづけるだろうということです。
われわれがこの30数年育んできた「秘湯とは」決して古くて朽ち果てゆく建物や温泉や日本文化そのものを意味するものではありません。
どんなに歴史があり温泉が景勝が優れていようとも、そこで湯宿を守ろうと雪かきに汗する日々精魂こめる無名の戦士がいる、そんな人材が育たなかったらやがては宿も秘湯も消えてなくなるのです。秘湯はひとなり。
日本は老齢社会に突入し過疎化が加速度的に進む時代の趨勢のなか、これからさき山奥の自然環境や荒廃を食い止めるのは、ますます難しい時代がやってきます。
日本人の求める原風景や心のふるさと、いつでも素直な心を取りもどし安らぐ空間へと帰れる場所を失うことなく守ってゆくこと、元気になって社会へ日常に戻ってゆける湯宿を守ること、それが「秘湯を守る」ことに繋がっていく。
「秘湯とは」・・・かけがえのない「人から人へ」の絆の架け橋なのではないかとわれわれは思っています。・・・旅びとの想いに寄り添い、秘湯の地にしっかりと根をはれる宿びと。厳しい環境条件であろうとも、山奥やふるさとに誇りをもち、自然を守り日本の原風景を守ってゆくこと。そのための勉強会や交流の場がこの会の活動の根幹を支えています。未来へむけて、温泉という日本遺産を大切に守り地球環境を守ってゆける地域づくりに尽力できる、その核となる後継者を全国へ会の輪を広げながら造っていきたいと考えています。
そんな地域と宿を旅先としてお選びいただく一つのツールとしまして、ITを利用する旅人の為の宿泊予約サイトをこの度立ち上げることとなりました。とは申せ、IT環境の無い会員宿も多く、小旅館ゆえの提供客室の無さ等の不便は当初あるかもしれませんが、会員宿一丸となり、より充実度を増す為の努力をして参るつもりですので御理解のうえ、当会Webサイトを御利用いただけますればこれ以上の幸福はありません。